ナレーション: 1392年から1910年までの519年間続いていた国、朝鮮。その519年の歴史上最も偉大な発明といえば、何と言っても「ハングル」である。
『訓民正音』からは、ハングルを作った世宗大王の、民衆に対する深い愛を読み取ることができる。一般的に、文字は祖先から受け継がれていくうちに徐々に作られるものであるが、完全な形で新しい文字がいきなり作られ、それが一国の共用文字として使われた例は、世界文字史上においてハングルのみなのである。
ハングルの母音の形は、口を開けた際の口の形を模しており、宇宙の三つの根源と考えられていた天地人を象徴している。
また、子音は五つの発音器官の形を象って作られており、ここには東洋哲学の中心的思想の一つである五行思想も反映されている。
過去、ハングルという文字の誕生を巡っては諸説あったが、「民を教える正しい音」という意味を持つ『訓民正音』が1940年に発見されたことにより、ハングルを巡る様々な謎が解き明かされた。
また、『訓民正音』は文字を作った目的や製作主体が誰なのか、などについても詳しく説明している。
この本がユネスコ記憶遺産に登録されたのも、ハングルが発明された文字体系であることを明かす貴重な資料だという点による。